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【モチベーション】宇宙,最後のフロンティア
大学1回生春休みの終盤,せっかくの大学生活なので,何かに情熱を持って取り組みたいと思って,とある学生団体にメールを送った.
内容は「宇宙に興味があります!仲間に入れてください!」.
高校時代から宇宙兄弟の読者で,なんとかして宇宙にいきたいという気持ちを抱いてきた.
とりあえず,今からでも宇宙に関わることを始めたい.それだけでした.
設立者にして代表のHさんと図書館でお話をして,即加入することになった.
このHさんは,その後の白鳥の人生に大きな影響を及ぼした先輩のうちの一人である.
ロケットを作る団体RiSA
団体の名前はRitsumeikan Space Association (RiSA).
NASAと似た語感の通り,ロケットを打ち上げんとする当時設立3年の学生団体である.
機械工学科の学生がほとんどで,物理科学科が所有する「実験工房」を活動場所(住処)としていた.
夏期休暇には,日本中のロケット学生団体が集まる能代宇宙イベント(秋田県)に参加することが年中行事.
その一大イベントを軸に,プロジェクトを組んで,大型モデルロケットの製作するのが主な活動内容.
普段は,小型モデルロケットを打ち上げたり,理工学部の学生や近所の子供達にモデロケ教室を開く.
![](https://i0.wp.com/katsuyaswan.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2019/08/IMG_8143-1024x768.jpg?resize=620%2C465)
1mmが近似できない世界
物理の世界では,真空下で球形のものを扱いがちですが,エンジニアリングの世界は違う.
それを痛感したのが,新入生として参加した最初のプロジェクトで,ロケットのボディを製作した時である.
設計図を用意せず,1mmなど誤差だと感覚に頼って製作し,先輩方からこっぴどくダメ出しされてしまったのだ.
設計図通りに忠実に,求められるだけ精度を求めていくエンジニアリングの世界の入り口に立った気がした.
ボール盤,旋盤,フライス盤を始めとする工作機械に物理専攻の学生として触れられたことは本当に良い機会だった.
「ないものは自分で作れ」という精神は後に所属した是枝研究室の精神に通じるものがあり,自分がたどってきた道が正しかったかもしれないと思った.
わからんとこがわからんは怠惰
どの学問でも共通して言えることが「わからんとこがわからん」.
ロケットがどうして飛翔するのか,どういう構造ならうまく飛ぶのか.そもそもうまく飛ぶというのはどういう状況なのか.
様々なことに関して感覚的で厳密に理解しない.
わからんとこがわからんと何をしていいかわからず,モチベーションが続かない.
そういう状況に白鳥は陥っていた.
先輩方が教えてくれるであろうという傲慢さに加え,怠惰で救いようのない無知であった.
先輩方が引退して初めて,自らが先輩として,この問題に立ち向かうことになった.
団体解散の危機
同回生で代表を引き継いだHが後輩からの執拗なパワハラ?に耐えられず,職務を放棄し失踪.
緊急会議が開かれ,Hに執拗なパワハラ疑惑の後輩が投票により次期代表になった.
「白鳥ならこの団体を引っ張ることができる」という謎の自信と周囲からの信頼の乖離に落胆した.
さらに,参加してきた航空宇宙系イベントで感じた自己効力感の低さが追い討ちをかけた.
この時を境に,モチベーションはほとんど形だけになり,RiSAから距離をとるために休部をした.
航空宇宙学を学びたいという気持ちも一気にしぼんでしまい,残された学部生活をさらなる有意義な学生活動や留学に費やそうと思うようになった.
いい意味で転換点,わるい意味で責任放棄.
「エンジニアリングは人間関係」とどこかで聞いたが,人間関係が複雑になるだけで,情熱が一気に冷める様を経験し,まさにその通りだと思った.
エンジニアリング(How)とサイエンス(Why)
団体は他にも問題を抱えていた.
活動場所である.
物理科学科の所有する部屋を実質的に占拠しているサークルと物理科教授陣に思われていたのだ.
中には,「でかいロケット花火をただ打ち上げてるだけでは?」という痛い批判.
サークル(思い出づくり)ではなく,研究団体になるためにどうするべきなのか.
ポイントは
「エンジニアリング(How)だけでなくサイエンス(Why)を」
「他の真似をしない」(研究の改良や発見)
「他が理解できるよう記録に残すこと」(研究の発表)
こうして考えてみると,学生活動においても研究活動基本的な要素が散りばめてあるように感じる.
実験工房という場所
学部生活で多くの時間を実験工房で過ごした.
冷暖房完備で冷蔵庫,電子レンジがあり,大学のWi-Fiとは別のWi-Fiが使用可能で,何よりドアのロックがコード入力だったため,いつでも入退室可能であるという研究室のような環境.
実験工房担当の講師にしてRiSA顧問(当時)のH先生は,趣味で実験工房に多くの映画や本を置かれていたため,その恩恵に死ぬほど浴していた.
同時にこの方は白鳥の恩師でもある.
H先生から学んだことはまたまとめたい.
有川浩の小説「キケン」に出てくるような自由な環境が実験工房にもあったと思って,感傷的になった.ああ,能力不足.
あんなにいたのに,残ってる写真なさすぎて残念.
現在は少しリニューアルして,とてもオープンな環境になりつつある.
詳細はこちらから
![](https://i0.wp.com/katsuyaswan.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2019/08/IMG_1179-1024x768.jpeg?resize=620%2C465)
できることが確実に増えた
ただ,イベント企画から,見やすい資料作成やその報告発表まで,何かを誰かとチームで成し遂げる最初の経験を得た.
怠惰で無知な己を戒めるという意味で,能動的にならざるをえない環境に身を置くことは大切だなと感じた.
これらの経験がこれ以降の自分に大きな自信をもたらし,その他の学生活動に大いに活かされたと思う.
現在のRiSA
現在のRiSAは残念ながら解散してしまった(2022年).
またしても人集めに失敗し,後世に残るような団体を形作れなかった.
【最後に】
この団体に所属して,本当に多くの失敗をした.
しかし,この経験が圧倒的に白鳥の世界を押し広げたのは間違いない.
また,あの実験工房で面白いこと考えてる学生同士がわちゃわちゃやっていると思うと本当に羨ましい.